

昭和元禄落語心中 第二話 反応・感想
「問題はね、彼の経歴ですよ。吉切組と言えば、あのあたりを束ねている一大組織だ」
「そんなところに出入りしていた人間ですよ。しかも彼は前科があるそうじゃないですか。だいたいね、落語会界っていうのは、」
「毎日毎日、よく飽きないもんね」
「んふふふ、姐さんもすっかりいいおっかさんだねえ。おいらも家族がいるって思うと
仕事に精がでるってもんだい」
「うっさい。あんなたなんかまだ仮免だよ。いやんなったらすぐ追い出してやるよ」
「ええ~そりゃないぜ、もう婚姻届も出したってのに」
「たく、子供が二人も三人もいるみたいで、いやんなるね」
「やれやれ、今更こんな昔のことをつついてきやがるとは。無粋だねえ」
「心配なのはそれだけじゃねえけどなあ。こういっちゃなんだが、最近の与太ちゃんはどうもなあ…」
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「みんなでワイワイワイワイ言いながら――」
「どうした助六、先代の真似にしちゃつまんねえぞ、この三文野郎!それでも真打か!」
「なんだてめえ、三代目の落語にケチつけんのか!」
「つまんねえモンにつまんねえつって何が悪い?てめえこそこんなもん面白がりやがって耳掃除してんのか!」
「なんだとこの野郎!やんのかあ?!」
「降板?」
「世間がどうもうるさくてねえ、スポンサーも気にしてるし、悪いね」
「いまんとこ、もう一度やってみな」
「へ、へい!――そいでねえ、」
「駄目。何度言ったらわかるんだい、お前さんのやる女房は思慮が浅い。裏声もやめろ、みっともねえ。地声で女を表現しなさい」
「でもおいら、師匠みてえないい声出ねえし…」
「口答え出来るご身分かい」
「す、すいやせん」
「何を焦れてんのか知らねえが、一朝一夕でうまくなれるほど噺家は楽な商売じゃありませんよ。
お前さんもそいつはよくわかってんだろう。」
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「仕事が減って暇んなったんなら丁度いいじゃねえか。しっかり稽古なさい」
「ああ!あう~」
「なんでいお前さん、一人で這ってきたのかい? おっかさんはどうしたの」
「…はあ、なんであたしがこんなことしなきゃなんねえんだか。泣くわ暴れるわ汚ねえわ、」」
「…これじゃ小言三味線だね」
「小夏、起きなさい。だらしのない」
「夏は戦中の欠伸でございます。ではお稽古にかかりましょう。心持は八下がり…」
「――おや起きちまった」
「子供の時分はこうやったら寝入っちまったもんだが」
「びっくりした…なんで昼からいるのよ」
「与太のお披露目ですっかりくたびれちまってね。この夏は協会にお願いして出番を減らしてもらったんだよ」
「嫌だ、すっかりじいさんだね」
「……ずっと待ってるんだよ。おまえさんがあたしを殺しとくれんのを。あの日からずっと待ってる」
「後生だよ。このガキが静寂を壊すんだ。心乱さないでくれ」
「まだ半分も埋まってねえって。おいらのせいだ」
「ごきげんよう、与太郎君。来てやったよ」
「アマケン!テメエ何で来た!?」
「何ってそりゃ、こ・れ・だよ」
「っかーーーーーーーーーー!!!!」
「ざまあねえですなあ。ほれほれ、ほーれほれ」
「ま、有名税ってやつでしょ。キミも売れっ子になったもんだね」
「君なんてどう考えても与太郎止ま――」
「な、なんだね?殴っていいのかね?そんなことしたら取り返しがつかないぞ?うわあ!うわあ!!」
「与太さん落ち着いて!」
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「どうせ君、行き詰ってるんだろ? 八雲、助六、双方の影響が強すぎるが、中途半端にどちらの本質にも迫っていない。
数多の落語を聞いて来た者として断言しよう」
「君には自分の落語がまだない!」
「ただ一点、弟子として八雲の名に泥は塗るな。それだけ忠告しに来たんだ。
良かれ悪しかれ今日の落語会のことは記事に取り上げてやろう。頑張り給え」
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「とにかく一番やっちゃいましょう」
(兄さんすべりまくってらあ…さっきのあれ引きずっちまってんなあ)
(おいらの落語…おいらの落語…おいらの落語…そうだ。こんなにじめっとした天気だし)
(思いっきり馬鹿な話ですかっと笑かしてやろう!)
「いよっ!」
「待ってました!」
「本日は足元のお悪いなか、誠に誠におありがとうございやす。こんな日は、あたしも家でお道楽をしていたいもんですが、昔は道楽ってえと、若え士が集まって、おう!一丁遊びに行こう!って言うだけで吉原でお女郎買いと相場は決まっていたようで」
『…からっと何でも金巾で模様が織りなしてあるやつだ。
いつか高島屋の陳列で見たナントカ錦の丸帯で380円の札がついてたんだぜ』
『どこの世界に吉原へ行くのに自分の嫁さんに断るやつがあるんだよ。』
「へえ、実は和尚さん、あのー、今日はお願いがあって参りやして。
実はあのう、手前共の親類の狐に娘が憑きまして。えー、手前共の親類の狐に娘が憑きまして!』
『嬉しそうだねえこいつぁ、ちゃんと着けてきただろうね?錦のふんどし』
『もちろんだ、とびっきりだよ!あたあいのはね、あたいのはね、あたいのは、これだ!』
『かっぽれー!』
「高座で裸になるなんて…こんな醜態を記事にしたら私にも落語の名にも傷がつく!」
「期待外れも甚だしいですな!」
「あ、あ。あ…」
「与太さーん」
「どうしてあんな馬鹿やっちゃったの?こんなおかしな会は僕も初めて見ましたよ」
「ようし、今晩はバアッと飲みに行こう」
「やあ、これは奇遇ですな。どこぞのお大臣のお座敷ですか?」
「それが何でかこの晩は振られちまいましてな。まったく上がったりですよ」
「八雲師匠、それならば一晩僕に買わせて頂けませんか。ご祝儀なら弾みます」
「失礼ですが、初めてのお客様に不見転で買われるわけにはいきませんから。ご祝儀は頂けません。けど、どうもウチのがご厄介になっているようで。ご挨拶くらいでしたら」
「やった」
「師匠!すいやせんでした!」
「なんでいこの馬鹿は。入りしなに」
「さっきのキャンセル、きっとおいらのせいなんです。あんな記事出ちゃったから…」
「珍しく青い顔してると思ったよ。まだあんな記事気にしてんのかい?」
「この子ねえ、さっき高座の途中で裸んなっちゃって。それで大コケしたんです」
「はー…与太、背中の彫り物見せてみな」
「みっともねえ古傷で」
「芸人なんて見られてなんぼだろう。お前さんに何を隠すことがあるんだい」
「なんだい」
「筋彫りだけど、見事な鯉金じゃねえか。お前さんはこれから過去と向き合わなねえとならねえ」
「決別じゃなくて抱えて生きろ。罪を忘れるな、それが人間の業ってもんさ」
「ありがとうございやす」
「先生、師匠、すいやせん! やっぱり今日は、お先に失礼させて頂きやす! 飲むより稽古がしてえんで! さいならー!」
「わあっ、いいもの見せて頂いて。美しい師弟愛」
「どうもご無沙汰しまして。あの学生さんがこんな立派な旦さんになって」
「ご記憶で」
「あの先代の最後の高座を見て、私は故郷に帰ろうと決意しました。演芸好きが祟って、結局今もこんな仕事をしていますが。
僕は与太さんと百年先にも残る新作落語を作るつもりです。」
「本当はあなたにも新作をやってほしい。でもそれは酷というものでしょう」
「僕は後世に残したいんです。あなたの落語を。あなたの人生の全てを。
あらゆることを残したい」
「あなたに落語は殺させませんよ」
「もしあなたから語ってくれないなら、与太郎君から。人は否応なくそういうものを伝えてしまう生き物です。
明治・大正・戦前名人、寄席や七代目のことも。知りたいことは山とあります。
小夏さんのこと。助六師匠のこと。みよ吉さんのことも」
「何故、その名を?」
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3位「降板?」
2位 2期OP 今際の死神
1位「かっぽれー!」
管理人の一言
観客の反応がリアルでこっちも心痛いわwwwww
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